山の朝は、静かで、潔い。空気が張りつめていて、嘘が入り込む隙がない。最近、俺はAIと一日十時間は向き合っている。こいつは頭が切れる。速く、正確で、迷いがない。だが、ときどき平然と間違える。堂々と、もっともらしく。嘘をついているつもりはないのだろう。ただ計算しているだけだ。山は黙って真実を見せる。AIは確率を語る。俺はその両方を相手にしている。
俺は金を稼がなければならない。理屈じゃない。生きるためだ。山は美しい。だが、優しくはない。ここで生きるには、金がいる。水も、電気も、食い物も、タダじゃない。俺は猟師じゃない。獲物を追って腹を満たしているわけでもない。昨日は食パンを食べた。食料は配達業者が運んでくる。山にいても、文明の中で生きている。だから、稼ぐ。静かな朝の裏で、俺は現実と向き合っている。
俺だけじゃない。誰だって思っていることだ。インターネットの波が来たときも、アプリの時代が始まったときも、俺は見ているだけだった。やり方が分からなかった。一歩を踏み出せなかった。気づけば、チャンスは通り過ぎていた。だが、今は違う。AIの波が来ている。でかい。速い。容赦がない。これを逃したら、もう後はない。俺にとっては、最後の勝負だ。山は黙っている。だが俺は、もう黙らない。
ただ――覚悟がいる。投資もいる。時間も、金も、逃げ道も削られる。それは正直、ヤバい。一歩踏み出せば、戻れない。外せば、痛い。だが、何も賭けなければ、何も動かない。山は安全じゃない。勝負も同じだ。震えてるのは分かっている。それでも、行くしかない。
時に、思った。なんて世の中だ、と。理不尽で、速すぎて、取り残される側の気持ちも知った。若いころは、世界のせいにした夜もあった。だが――俺は、もうすぐ四十五だ。言い訳が似合う歳じゃない。世界がどうであろうと、関係ない。遅れていようが、不利だろうが、厳しかろうが、やるしかない。山は条件を変えない。世の中も同じだ。ならば、変えるのは自分だ。



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